AIで融資用事業計画書を作る方法|試算表・資金繰り表と数字をつなぐ
融資用の事業計画書で重要なのは、文章をきれいに整えることだけではありません。試算表の実績、今後の売上と費用、資金繰り、借入後の返済財源が同じ前提でつながっているかを説明できることです。
Will Forward Consulting株式会社では、AIを構成案や数字の整合確認に使いながら、事業の前提、実行する施策、金融機関へ説明する内容は人が確認する形を基本にしています。
事業計画書は「融資が通る文章」ではない
事業計画書は、会社の現状、課題、改善策、必要資金、返済の見通しを一つの流れで説明する資料です。日本政策金融公庫も、制度ごとの事業計画書や経営改善計画書、資金繰り表の書式・記載例を公開しています。利用する制度や金融機関により必要資料は異なるため、提出先の現行書式を確認する必要があります。
AIで作った文章や表が、そのまま融資判断を決めるわけではありません。融資の可否や条件を保証する表現はできません。
最初にそろえる資料
| 資料 | 確認すること | 計画書との接続 |
|---|---|---|
| 試算表・決算書 | 売上、利益、借入、純資産、前年差 | 現状認識と改善の出発点 |
| 資金繰り表 | 入金・支払い・返済の時期 | 必要資金と返済可能性の確認 |
| 商品・顧客別資料 | 売価、原価、数量、粗利・限界利益 | 改善策と売上計画の根拠 |
| 借入返済予定表 | 残高、返済日、元金・利息 | 既存返済を含む資金計画 |
試算表・資金繰り表・計画書をつなぐ5段階
この5段階では、実績として確定した数字と、今後の施策に基づく仮定を分けて扱います。AIは集計や不一致候補の発見を支援できますが、元資料との一致、施策の実行可能性、金融機関へ説明する内容は人が確認します。
試算表と決算書から現状の数字を確定する
入力資料:直近の試算表、決算書、総勘定元帳、預金残高、借入返済予定表、納税予定などをそろえます。月次推移を見る場合は、各月の締め状況と会計期間も確認します。
作業:売上、売上原価、販管費、利益、現預金、借入残高を転記し、単位、税込・税抜、対象期間を統一します。一時的な収益・費用や未計上項目があれば、通常の実績と分けて記録します。
- 成果物:計画の出発点となる実績基準表
- 最終確認:基準表の合計が試算表・決算書・返済予定表と一致しているか
商品・顧客・部門別に、利益を押し下げる要因を確認する
入力資料:商品・顧客・部門別の売上、数量、売価、材料費、外注費、物流費、作業時間など、利用できる範囲の明細を使います。分類がない場合は、まず比較できる単位を決めます。
作業:売上規模だけでなく、粗利や限界利益、値引き、残業、少量多品種への対応など、利益差の要因を分けます。たとえば「売上は大きいが、値引きと追加作業を含めると利益が残りにくい取引」が見つかった場合も、それだけで原因を確定せず、契約条件や現場事情を確認します。
- 成果物:商品・顧客・部門別の採算比較表と確認事項一覧
- 最終確認:配賦方法やデータ不足による見かけ上の差を、実態と取り違えていないか
改善策を価格、数量、原価、固定費の数字へ置き換える
入力資料:値上げ候補、販売数量、生産能力、仕入条件、外注費、残業時間、固定費の見直し案などを使います。
作業:「売上を増やす」「原価を下げる」といった方針を、実施時期と数値へ置き換えます。価格、数量、変動費、固定費を別々に動かし、同じ効果を二重計上しないようにします。実績を基準値に置き、標準ケースと慎重なケースなど仮定を分けます。
- 成果物:施策、担当、開始月、月次効果、根拠を並べた改善計画
- 最終確認:人員・設備・取引条件を踏まえて実行可能か、効果の根拠を説明できるか
売上計画と支払・返済時期を資金繰り表へ反映する
入力資料:売上計画、入金サイト、仕入・経費の支払条件、給与日、納税時期、既存借入と新規借入の返済条件を使います。
作業:売上を計上する月と、現金が入る月を分けます。同様に、費用計上と実際の支払いも分けます。借入金の元金返済は損益計算書の費用ではありませんが資金は減り、支払利息は費用と資金支出の両方に関係します。税金、賞与、季節的な仕入れや在庫増加も月ごとに反映します。日本政策金融公庫の資金繰り表記入例でも、借入金返済元金と支払利息は別項目で整理されています。
- 成果物:月次資金繰り表、必要資金、資金残高の最低月、返済予定
- 最終確認:売上が伸びても入金前に資金不足が起きないか、納税・季節運転資金・既存返済を含めているか
計画書・試算表・資金繰り表の期間と前提を照合する
入力資料:完成した事業計画書、損益計画、試算表、資金繰り表、施策一覧、返済予定表を横に並べます。
作業:開始月、会計期間、売上成長率、粗利率、人件費、投資、借入、返済、税金などの前提を一覧にし、資料間で同じ値になっているかを確認します。実績値、確定予定、経営上の仮定を区別し、仮定を変更したときにすべての資料へ反映します。
- 成果物:前提一覧と資料間の照合表
- 最終確認:計画書の説明、損益の数字、月末資金残高、返済財源を同じ前提で説明できるか
AIに任せること、人が確認すること
- AI:構成案、表の整形、前提の抜け、数字の不一致候補、質問候補の整理
- 人:元資料との一致、売上根拠、資金使途、施策の実行可能性、金融機関への説明
- 経営者:実行する施策、借入額、投資、返済を含む最終判断
ChatGPTのデータ分析機能は表計算ファイルの集計や可視化を支援できますが、OpenAIも結果を利用する前にコード、出力、前提を確認するよう案内しています。
実務事例から分かる「計画と実績の接続」
Will Forward Consulting株式会社の実務では
前期赤字と債務超過を抱えるある企業について、顧客・商品別の採算や残業コストを確認し、商品構成や生産方法を見直しました。四半期で目標とした限界利益率に達し、経営計画、試算表、資金繰り予測を金融機関へ提示して追加融資を受けた事例があります。
これは一つの過去事例であり、同じ方法による融資や業績改善を保証するものではありません。融資額や通期利益、債務超過の解消は記事から確認できないため、ここでは断定しません。重要なのは、施策の説明だけでなく、試算表と資金繰りを更新し、計画の実行状況を示した点です。
提出前に確認したい項目
- 対象期間と基準月がすべての資料で一致しているか
- 売上計画の数量・単価・時期に根拠があるか
- 資金使途と支払時期が資金繰り表へ反映されているか
- 既存借入を含む返済予定が抜けていないか
- 標準ケースと慎重なケースを区別しているか
- 経営者自身が数字と施策を説明できるか
まとめ
AIは事業計画書の構成と整合確認を支援できます。しかし、融資用の計画では、試算表、資金繰り表、施策、返済財源を同じ前提でつなぎ、人が根拠を確認することが不可欠です。
中小企業の財務DX、資金繰り表をAIで自動化する方法、下書き中の「資金繰り予測をAIで行う方法」も関連します。
事業計画と資金繰りを整理したい方へ
Will Forward Consulting株式会社へお問い合わせください。
参考資料
執筆者:三輪 宜伯
Will Forward Consulting株式会社 コンサルタント/中小企業診断士


