管理会計にAIを活用する方法|月次試算表と商品・顧客別採算を経営判断につなげる
管理会計にAIを使う目的は、月次試算表を自動で眺めることではありません。会社全体の数字を、部門・商品・顧客など判断に必要な単位へ分け、予算や前月・前年との差を確認し、次に何をするか決めることです。
Will Forward Consulting株式会社では、月次試算表や決算書を確認したうえで、経営者が感じている課題と実際の数字を照らし合わせます。本記事では、数字を分ける軸、AIに任せる作業、人が確認する点を整理します。
管理会計は、社内の判断目的に合わせて数字を分ける
決算書は会社全体の財政状態や経営成績を確認する重要な資料です。中小機構のJ-Net21も、決算書は利害関係者への報告だけでなく、経営者が自社の状態を把握・分析し、今後の事業計画を立てる資料として重要だと説明しています。
一方、社内で価格、商品構成、部門の方針などを判断するには、会社全体の合計だけでは足りない場合があります。本記事でいう管理会計は、判断したいことに合わせて集計の軸と比較対象を決め、社内の意思決定に使う数字を整える取り組みです。法定の財務会計と同じ処理を全企業へ求めるものではありません。
| 見る単位 | 確認できること | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 会社全体 | 売上、利益、現預金などの全体像 | 変化がどの部門・商品・顧客から生じたか |
| 部門・事業 | 事業ごとの売上と費用、利益への貢献 | 共通費の配賦条件、部門間取引 |
| 商品・顧客 | 売価、数量、原価、粗利・限界利益 | 値引き、物流、残業、返品など明細の条件 |
| 資金繰り | 入金・支払い・返済後の残高見込み | 売掛金回収日、買掛金支払日、税金、借入返済 |
会社全体が黒字でも、部門別では見え方が変わる
Will Forward Consulting株式会社の支援では
会社全体では利益が出ていても、部門別に分けると主力事業の赤字を別事業の利益が補っていたことが分かりました。さらに商品別・顧客別の損益へ分け、原因の分析を進めました。
これは部門別会計の導入経験であり、AI導入の成果を示すものではありません。重要なのは、AIを使う前に「何を判断するために、どの単位で数字を分けるか」を決めることです。分析時点で進行中だった取り組みを、改善完了や黒字化の実績としては扱いません。
月次で確認する4つの単位
1.会社全体の売上・利益・現預金
月次試算表で全体の変化を確認します。決算書や試算表の数字は出発点であり、差が大きい項目は明細へ戻ります。
2.部門・事業別の損益
会社全体の利益を、部門・事業のどこが生み、どこが押し下げているか確認します。共通費を配賦する場合は、人数、工数、売上など、どの基準を使ったか残します。
3.商品・顧客別の採算
売価、数量、変動費、粗利・限界利益をそろえて比較します。商品・顧客別の具体的な確認方法は、中小企業の原価管理にAIを使う方法でも紹介しています。
4.入出金予定と資金繰り
利益と現金は同じではありません。入金と支払いの時期を分けて確認し、売上や利益の変化が資金残高へいつ影響するかを見ます。
中小企業庁が公開する「モニタリング強化型特別保証制度用 月次管理表」の記入例でも、月次の財務・資金繰り状況と、経営課題・対応策を合わせて確認しています。これは特定制度の記入例であり、すべての企業に同じ様式や指標が義務付けられるという意味ではありません。
管理会計にAIを使う5段階
判断したいことと集計軸を決める
利益を押し下げる部門を知りたいのか、商品・顧客別の採算を見たいのか、資金不足の時期を確認したいのかを先に決めます。
月次資料の期間・科目・単位をそろえる
試算表、予算、前年実績、部門・商品・顧客別データについて、対象月、税込・税抜、円・千円などの単位、科目名をそろえます。
AIで差異と構成比を比較する
AIに表を渡し、予算比、前月比、前年比、部門・商品・顧客別の構成比を整理します。ChatGPTのデータ分析機能は、表計算ファイルの集計、表・グラフ作成、計算を支援できます。利用できる形式や機能はプラン・設定等で異なります。
元帳・明細・現場情報へ戻って確認する
AIが示した差異や仮説を、元帳、請求・支払い明細、在庫、工数、現場の出来事と照らします。生成されたコード、出力、前提も確認します。
月次の場で対応と担当を決める
確認できた事実を基に、価格、商品構成、費用、投資などの対応を決めます。誰が、いつまでに、どの数字を更新するかも決め、翌月に予実差を見直します。

AIに任せること、人が判断すること
| AIが支援できること | 人が確認・判断すること |
|---|---|
| 表の集計、並べ替え、構成比・差異の計算 | 期間、科目、配賦、除外項目など集計条件 |
| 変化の大きい項目や確認候補の整理 | 一時要因か構造的要因か、現場の事実との一致 |
| 表・グラフ、月次会議用の説明案 | 価格、商品構成、投資、撤退、担当と期限 |
AIの出力が整っていても、経営判断が正しいとは限りません。集計条件を変えれば結果も変わります。元資料と現場の事実へ戻り、経営者が何を優先するかを決める工程が必要です。
AIによる財務データの可視化と検証方法は、AIで財務分析する方法、導入全体の進め方は中小企業の財務DXもご覧ください。
財務資料をAIへ渡す前の確認
顧客名、個人名、口座、取引明細などを含む資料は、そのまま入力せず、利用目的、入力が必要な項目、契約プラン、保存・学習利用、共有範囲、削除方法を確認します。個人情報保護委員会も、個人データを含むプロンプト入力について、利用目的の範囲や機械学習への利用等を確認するよう注意を示しています。
まとめ
管理会計へのAI活用では、まず判断したいことと集計軸を決めます。月次試算表を会社全体、部門、商品、顧客、資金繰りへ分け、AIで比較し、人が元資料と現場を確認します。最後に対応、担当、期限を決め、翌月の数字で見直すところまでが一連の運用です。
月次の数字を経営判断につなげたい方へ
会社全体の数字しか見えていない、部門・商品・顧客別の採算を整理したい、AIの集計結果を月次の判断へつなげたい方は、Will Forward Consulting株式会社へお問い合わせください。
執筆者:三輪 宜伯
Will Forward Consulting株式会社 コンサルタント/中小企業診断士
財務・業務改善の視点から、経営判断に必要な数字の整理、資金繰り、商品・顧客別採算の確認を支援しています。


