財務コンサルのAI活用事例|可視化・仮説・実データ確認の進め方
財務コンサルがAIを使う場面では、グラフがきれいにできたことよりも、その数字が元資料と合っているか、示された原因が現場の実態に合うかを確かめる工程が重要です。Will Forward Consulting株式会社では、AIに資料整理・可視化・仮説の候補づくりを任せ、人が実データ、対話、競合情報を確認して判断しています。
財務コンサルのAI活用は「答えを出してもらうこと」ではない
Will Forward Consulting株式会社では、顧客支援と自社業務でDataプラグインを利用しています。Dataプラグインは、OpenAIのデータ分析機能を使い、表計算ファイルなどの集計、表やグラフによる可視化、傾向や外れ値の確認を支援するものです。利用できるファイルや機能は、モデル、プラン、ワークスペース設定などによって異なります。
実務での目的は、AIに経営判断を任せることではありません。複数の資料に分かれた数字を比較できる形へ整え、変化や違和感を見つけ、確認すべき問いを早く具体化することです。
Will Forward Consulting株式会社では、採用難と業務の属人化という課題を背景に、AIを活用しながら業務の分解と標準化を進めています。これは現在進めている自社の取り組みであり、削減時間や利益への効果を測定済みという意味ではありません。
Will Forward Consulting株式会社での使い方
Dataプラグインで数字を可視化し、問題点、原因、改善案の候補を出します。その後、元となる実データへ戻り、経営者や担当者との壁打ち、必要に応じた競合調査を通じて、人が候補の妥当性と実行可能性を判断します。
AIを使った財務分析の基本と元データの確認方法は、AIで財務分析する方法で詳しく紹介しています。
実務で調べている5つのテーマ
同じ損益の変化でも、確認する資料と判断は一つではありません。Will Forward Consulting株式会社では、次のようなテーマを調べる際にAIを活用しています。ここで挙げるのは調査対象であり、AIだけで原因や改善効果が確定したという意味ではありません。
商品別の限界利益
商品ごとの売上と変動費をそろえ、どの商品が固定費の回収に貢献しているかを比較する材料にします。
販売費及び一般管理費
科目別・月別の推移を見て、増減が続いている項目や一時的な支出を確認する入口にします。
価格交渉
売価、数量、原価、追加作業などを整理し、価格を見直す場合に確認すべき条件を明らかにします。
原価
材料費、外注費、工数など、対象となる費用の範囲と配賦方法を人が確認したうえで比較します。
その他の費用
内容がまとまっている科目は明細へ戻り、何のための支出か、継続的か一時的かを調べます。
商品別採算を売価・数量・変動費から確認する考え方は、中小企業の原価管理にAIを使う方法もご覧ください。
可視化から経営判断までの6段階
判断したい問いを決める
「利益が下がったのはなぜか」「価格交渉の前に何を確認するか」など、経営者が判断したいことを先に言葉にします。
分散した資料を集める
月次試算表、決算書、商品・顧客別データ、原価資料など、問いに必要な元資料を確認します。資料が複数のシステムやフォルダに分かれている場合は、対象期間と更新時点もそろえます。
比較できる形へ整える
期間、科目、税込・税抜、円・千円などの単位、商品名や顧客名の表記を確認します。欠落や重複があるままでは、きれいなグラフでも判断を誤るおそれがあります。
AIで可視化し、仮説候補を出す
月別推移、構成比、商品別採算などを表やグラフにし、問題点、原因、改善案の候補を整理します。候補は調査の出発点であり、確定した原因や施策ではありません。
元資料・対話・競合情報で確かめる
AIの出力を元データと照合し、経営者や担当者との壁打ちで取引条件や現場事情を確認します。市場や価格の前提が関係する場合は、出典と時点を確認した競合調査も行います。
人が対応を決め、次回の数字で見直す
確認できた事実を基に、価格交渉、原価の見直し、費用の扱いなどを判断します。実行後は同じ基準で数字を追い、仮説が正しかったかを確かめます。
財務資料をそろえるところから始めたい方は、中小企業の財務DXを何から始めるかも参考になります。
AIの候補をそのまま結論にしない理由
AIは、与えられたデータの範囲で集計や比較を行います。しかし、科目の意味、計上時期、例外的な取引、現場で起きたことまで自動的に理解しているとは限りません。OpenAIも、データ分析の結果を使う前に、生成されたコード、出力、前提を確認するよう案内しています。
たとえば費用の増加が見えても、それが不要な支出とは限りません。売上を得るために必要な投資か、一時的な支出か、今後も続くものかによって判断は変わります。数字の変化と事業の背景を結びつける作業は、人が担います。
財務資料をAIへ渡す前に
顧客名、個人情報、取引条件などを含む資料は、必要性を確認し、不要な情報を外したうえで扱います。利用するサービスの契約条件、データの保存・学習利用、共有範囲、接続権限、社内ルールは、実際のプランと設定に応じて確認が必要です。
AIと人の役割を分ける
- AIに任せること:資料の整理、集計、表・グラフ作成、変化の抽出、問題点・原因・改善案の候補づくり
- 財務コンサルが確認すること:元資料との一致、期間・科目・単位、仮説と実データの整合、現場事情、競合情報、選択肢の影響
- 経営者が判断すること:どの課題を優先するか、価格や原価をどう見直すか、誰がいつ実行するか、どのリスクを取るか
会社全体から部門・商品・顧客別へ数字を分け、月次の判断につなげる方法は、管理会計にAIを活用する方法で紹介しています。
まとめ
財務コンサルのAI活用では、資料を整理して可視化し、原因や改善案の候補をつくるところまでをAIで支援できます。一方、候補を元資料、対話、競合情報で確かめ、実行する施策を決めるのは人です。AIの出力を結論ではなく、確認すべき問いを具体化する材料として使うことが重要です。
財務資料の整理から意思決定まで相談したい方へ
資料が複数の場所に分かれている、数字を可視化しても原因を絞れない、AIが示した仮説を元資料と照合したい、分析結果を価格・原価・費用の判断へつなげたい方は、Will Forward Consulting株式会社へお問い合わせください。
参考資料
執筆者:三輪 宜伯
Will Forward Consulting 株式会社 コンサルタント/中小企業診断士


